食のそもそも話 66 ✳︎ 旬の野菜は、栄養たっぷり(後編)

 

【前説】
食のそもそもシリーズは2023年2月にスタート。
ほぼ毎週1話ずつ、野菜のあれこれページに綴っています。
 
 
内容は、食材 (八百屋まわり)の目利きとその仕組みについて、八百屋の視点で見て知って理解してきたことを整理しながら書いています。
 
 
生産者さんに会う機会も多く、講演会や勉強会にも参加し、さらにお客様から野菜の感想もいただく、そうしたことを重ねています。
 
その経験を整理することで食の本質をみなさまと共有して、「社会をもっと面白く豊かなものにしたい」というのがボクの野心です。
このシリーズはその第一歩としての脚本づくりです。
(シリーズぜんぶが書き終わったら、動画または音声で発信していく予定です。未来はシリーズでアニメーション動画にする予定)
 
 
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【本題】
 
さて、ここ何回かで「旬 (しゅん)」について整理しています。
旬の4つのメリット、美味しい、安い、栄養、安全。
 
 
今回は旬の「栄養」についての後篇です。
 
 
64では栄養価が季節でだいぶ違うことを書きましたが、今回はその理由についてです。
 
 
まずそもそも、どうして季節外で野菜を育てられるようになったのでしょうか?
 
 
それはF1種の登場と、ハウス栽培の登場、このふたつが大きいと思います。
 
 
【F1種の登場と、野菜の周年化と、栄養価】
たとえば冬が旬のほうれん草が夏でも育つようになったのはF1種 (掛け合わせた野菜。交配種)のチカラでしょう。
暑いのが苦手なほうれん草に、暑くても平気な野菜を掛け合わせていった。
同じ様に大根や小松菜なんかも、そうやって品種改良が進んだ結果、一年中出来るようになった。
ですが、たとえば冬に2ヶ月かけてゆっくり太く (でも背は低く)育つはずのほうれん草が、夏場では暖かいために1ヶ月ちょっとでギュンと細く長く育ってしまうそうです。
季節外に加えて早く育つため土の栄養が十分に野菜に移っていないということなのでしょう。
 
 
【ハウス栽培の登場と、野菜の周年化と、栄養】
たとえば夏が旬の胡瓜を冬に育てようとするとハウス栽培が必要です。
ハウスの中は太陽の熱がこもって暖かく、さらに暖房をたいて室内を暖めるそうです (実際に見学したことは無いのですが、そうした理由で燃料代が高くついて苦しいという話を聞きましたし、燃料代をケチると今度は室内の暖かさが十分でないため胡瓜の中心に茶色いスジが出来てしまいます)。
そうやって冬だけれど、「夏だよ」とだまして育てた胡瓜やピーマンやトマトたち。
施設代や燃料代 (暖房)のため高くなりますが、味と健康コスパはどうでしょうか。
 
 
【まとめ】
タネの改良と、ハウス栽培の登場で野菜が一年中並ぶ様になりましたが、頭の中に旬を置いて考えれば「何を食べれば健康コスパが良いのか」が見えてきます (旬の見分け方は62を参照)
 
 
2024年8月31日 月田商店 月田瑞志