食のそもそも話 48 ✳︎ ミネラルに幅があると野菜は元気
食のそもそも話は46から土と野菜の話に移っています。
土と野菜の話を書こうとするとその内容はとても広いと思います。
これを読んでいる方の多くは野菜の作り手ではなく、ボクも八百屋です。
ですのであくまで ” 目利き ” につながる内容だけ書いていこうとしています。
46では横山さんの里芋畑が疫病に負けずに豊作だったことを書きました。
なぜそうなったのか?
何回かに分けて考えていきます。
47で微生物が多い畑は土も元気だと書きました。
微生物が多い土で育つと収穫後の野菜が腐らずに枯れていくというエピソードもあります。
昨年、オルト・グラッツィアさんのピーマンをひとつ、試しに2ヶ月ほど車中に置いて観察しましたが、確かに腐らずにカチコチに枯れて木の断片の様になりました。
(ちなみに、それでも腐るものは腐ります。個体差がありますし、畑で成りながら腐る野菜も見てきました)。
今回は微生物の量ではなく、「質」を考察してみます。
47で、
▪️ 枯れ葉や糞(ふん)を微生物が食べてミネラルを出す
▪️ 逆に化学肥料は野菜のエサにしかならない
そんなことを書きましたが、これは伝わりにくいと思います。
合わせて ” ミネラルの幅 ” を考えてみます。
【その前にミネラルを整理】
30に詳しく書きましたが、ミネラルはざっくり言えば元素のことです。
元素は、それ以上分けられない最小のパーツです。
学校で習う「周期表」に並んでいます。
あれは理科の話だと思っていましたが、塩を学んでいるときに、「健康」の話だと知りました。
周期表には元素が118種類ありますが、ニホニウムのように一瞬だけ人工的に作り出すものもあります。
実際に自然界にある元素は90種類ほどだと言われています(参考文献 周期表図鑑 トム・ジャクソン著)。
その約90種類の元素たちが地球のパーツ、海のパーツ、動物・植物のパーツ、空気や土、果ては微生物やウィルス、アミノ酸やポリフェノールなど、すべてのパーツになっていると想像してください。
そしてボクたち人間のカラダも多くの元素で出来ていると言われています。
参考文献として「自然塩健康法 いのちを守る塩 武者宗一郎著」には46種類の具体的な記載があります。
また、解剖学者の三木茂夫さん(※ )はYouTubeの中で自然界の元素はすべて人の身体に入っていると語っています。
さらに、墨田区にある「たばこと塩の博物館」の入り口の動画内で、海水を包み込んで最初の生物(単細胞)が誕生し、複雑になり(多細胞)、海から陸へ、そして進化した今も ” 塩 ” を必要とする理由を説明しています。
合わせて考えると、ボクらの身体も約90種類で出来ていて、それは自然界のすべてに言えるだろうと思います。
動物も植物も、自然界にあるものは、これら約90種類が天然に含まれている。
そう考えます。
【ミネラルの幅】
さて、前置きが長くなりましたが、本題です。
横山秀男さんの里芋はなぜ元気だったか?
なぜ疫病にならなかったか?
微生物が多い土でそだった野菜はなぜ腐りにくいのか?
そして、仮説ですが、そうした野菜はなぜ美味しいのか?
まず逆を考えてみます。
日本の農業の99.5%は化学肥料を使って野菜を育てています(無農薬の率が0.5%なので、おそらくそうだと思います)。
化学肥料も元素です(つまり≒ミネラルです)。
例えばJA町田市のホームページを見ると、植物に必要な栄養素は16種類あり、、と窒素、リン酸、カリウム、カルシウム、マグネシウム、硫黄、ホウ素、マンガン、鉄、亜鉛、モリブデン、銅、塩素、酸素、炭素、水素が書いてあります。
これはたまたまホームページを開いたら分かりやすかったので引用しましたが、以前化学肥料メーカーのホームページにも16種類が書いてありましたので、だいたい同じ中身だと考えて良いと思います。
一般の野菜はこうした限定的なミネラル(≒元素)で育っています。
さらにそれをエサとして、鶏(卵も)、豚、牛が食べ、ボクらが食べます。
市場流通の野菜たちもそうした中身になります。
一方で微生物が多い畑では、枯れ葉や糞(ふん)を微生物が分解してたくさんの種類のミネラル(≒元素)を巡らせてくれると言われています。
動物の糞を使わない無肥料栽培では、モグラやミミズや虫が糞をして、その死骸を微生物が分解してミネラルを巡らせていると考えられています。
自然界の約90種類のミネラル(≒元素)をそのまま巡らせた畑、野菜。
横山秀男さんの里芋が疫病に負けずに豊作だったのは、そうしたバランスがあったのではないかと考えます。
※ 三木茂夫(みきしげお)さん
解剖学者、発生学者。
「バカの壁」を書いた解剖学者・養老孟司さんのお師匠さんにあたる方です。