食のそもそも話 51 ✳︎ 「耕さない」ことの意味を考える①根をつよく張る (後編)

 

食のそもそも話は46から土と植物の話に移っています。
50〜何回かに分けて、「耕さない」ことの意味を考えていきます。
 
 
2020年(おそらくその前年から)九州で起こったと言われる里芋畑の疫病 (人間には無害とのこと)が全国的に広がり、里芋の産地である埼玉県日高市でも県道126号沿いの里芋畑が遠くまで茶色く染まっていました。
 
 
同じ年、横山さんの畑では里芋が豊作でした。
その周囲の枯れた里芋畑と、目の前の緑色の元気な茎、このちがいのひとつに、「耕さない」こともあると思います。
※ 正確には、年に1回、うっすら耕したりします。
 
 
前回は耕さないことの意味のひとつ目として、「根が強く張る」ということを書きましたが、なかなか意味が伝わらないかもしれません。
今回はその辺りをもう少し丁寧に書いてみます。
 

前回オススメしたYouTube動画「土は生命体」の前半、1分35秒〜2分50秒の1分半だけでも観てみてください。
ここで、耕さない (またはうっすらだけ耕す)ことの良い点が2つ紹介されています。
 
 
ひとつめは、耕さないことで固い層 (※ )ができずに済むということです。
逆に耕すことを考えると解りやすいと思います。
一般的に耕すのには機械を使います。
その機械が畑を通るたびに、その機械の重さが畑を上から押して、それを繰り返すうちにある所で集中的に固い層が出来てしまいます。
それが根っこを深くはろうとするときの邪魔になり、根っこはその手前までしか張れません。
栄養を吸い上げられるエリアが狭くなってしまうという考えです。
 
 
耕さないということは、こうした固い層をつくらずにすむので、根っこが深くのひのびと張っていけることになります。
 
 
※ この固い層は農業においては水はけを悪くするというデメリットもありますが、このお話は別の回で実例を記す予定です。
 
 
ふたつめの良い点は、前年の作物の根っこが作ったトンネルを活かせる点です。
野菜が収穫されたあと、根っこはまだ土の中にあります。
この根っこが微生物たちのエサになって、腐ってなくなり、細いトンネルが残ります。
そうなると、新しくタネがまかれて、今まさに根を張ろうとしている野菜はそのトンネルに沿って根を張ろうとする。
根が張りやすいだけでなく、根を張ることにはエネルギーをそれほど使わずに済むため、地上の茎や葉を成長させる方にエネルギーをまわせる。
そうした考えです。
 
 
今の2つのことを踏まえて、あらためて動画を観て頂くと伝わりやすいと思います。
 
 
次回は、同じ動画の後半「菌根菌」についてくわしく考えていく予定です。