食のそもそも話 53 ✳︎「耕さない」ことの意味を考える③ ” 住み家を壊さない ” 〜団粒構造(だんりゅうこうぞう)〜
食のそもそも話は、食材や調味料を選ぶ際の ” 目利き ” に参考になるように、自然科学の視点から考察を重ねています。
ほぼ毎週1話ずつ書いていて、過去の分は「野菜のあれこれ」に残していきます。
1〜28はタネの話
30〜45は海の話(身体と密な関係)
46からは土の中のことを考えて書いています。
これから先の予定
60〜植物のこと
80〜微生物のこと
100〜発酵のこと
120〜遺伝子のこと
ざっくりそんな予定です。
遺伝子は今勉強中ですので、書き始めるころに知識が追いつく予定です。
さて、50〜55(予定)まで、「耕さない」意味を考察しています。
今回は52で書いた「住み家を壊す」を深掘りして考えてみます。
※ 土の中に微生物が多いほど野菜が元気に育つ、という仕組みについては46〜をご参照ください。
微生物がたくさんいる畑には「団粒構造 (だんりゅうこうぞう)」が出来ると言われています。
適度に水を保って、適度に水を流して、水に乗って空気も行き来する、そうした作りになっている様です。
その団粒構造を守っているのが微生物だと言われています。
微生物は菌糸(きんし)と呼ばれるものを出して土をつなぎとめて、住み家をつくります。
この住み家が結果として団粒構造と呼ばれ、農作物に有利にはたらく様です。
(ほかにも、菌糸は土全体、その土地全体をつなぎとめることで自然界では土砂崩れをも防いでいると言われています)
団粒構造があるとなぜ有利かを整理してみます。
①適度に水を保つ
微生物も水が大好きです。水がないと多くの微生物たちも生きていけないでしょう。菌糸でつくりだした住み家は、天然の貯水庫の役割をするそうです。雨が少ない日がつづくと畑は干からびていきますが、微生物が多い畑、たとえば横山さんの畑はそうした時季も乗り越える力があります。
②適度に水を流す
「水はけが良い」という言葉があります。逆に水はけが悪いことを考えると見えてきます。以前ある無農薬の農家さんが大雨のあとの写真を見せてくださいました。左側は無農薬の畑、右側はお隣の農家さんが農薬と化学肥料を使っている畑でした。無農薬の畑は水がなく、右側の一般的な畑は水たまりになっていました。
団粒構造は水を保つ一方で、要らない分は下に流す、もっというと、水は下にいったあと、また上にきたり、そうして行き来するそうですが、何にしても、水はけが良くなる様です。
野菜にとって水は大切ですが、水がありすぎても野菜は枯れてしまいます。
③空気も行き来する
水の流れに乗って空気も行き来できると、酸素が好きな微生物たちも行き来できるはずです。微生物には空気(酸素)が好きな微生物と、空気が嫌いな微生物がいると言われています。団粒構造は土に空気を含ませて、微生物の世界をより複雑に、多様にしていると考えられます。
たくさんの種類の微生物がいることで、たくさんの種類のミネラルを巡らせてくれるはずです。
そして野菜もミネラル豊富になっていくのだと考えられます。