食のそもそも話 55 ✳︎ 「耕さない」意味を考える⑤虫の居場所をつくる

 

食のそもそも話は、野菜や調味料を選ぶ ” 目利き ” につながる様に願って書いています。
支払うお代に対して「美味しさ」と「健康」にどのくらい期待できるか。
そうした健康コスパのための目利きです。
 
 
ほぼ毎週1話ずつ、野菜のあれこれページに書きつづっています (完成にはあと2年かかる予定)。
 
 
タネの話(1〜28) / 海とカラダの話(30〜45) / 土の中の話(46〜進行中) / 植物の話(ちかい未来) / 微生物の話(未来) / 発酵の話(未来) / 遺伝子の話(未来)
 
 
さて、50から耕さないことの意味を考えてきました。
 
 
今回のテーマは、
耕さないことで『虫の居場所をつくる』
です。
 
 
横山秀男さんにインタビューした月田商店の動画があります(ホームページのトップ画面)
3分30秒〜4分30秒の1分間を是非ご覧になってください。
 
 
2020年秋、疫病になり枯れていく周りの里芋畑をよそに、逆に「今年は豊作だ」と言った横山さん。
その畑で何が起きていたのか、そのために『草(くさ)』の意味を考えてみます。
 
 
動画の中で
「通路の間は草を生え放題にさせておけばいい」
「虫たちの居場所をつくることが大事」
そう語っています。
 
 
この言葉はそれまでの『虫』と農業のイメージとは逆でした。
以前のボクは、無農薬の真骨頂は農薬を使わずにどうやって虫が来ないようにするのか、だと思っていました。
ですが、横山さんは「虫は居ていい」「虫と野菜が同居することで野菜が育つ」と教えてくださいました。
 
 
ここで、横山さんに教わった無肥料栽培(化学肥料はおろか、フンなど動物性堆肥も使わない)の本当のところを整理します。
 
 
まず、一般的な農業(日本では99.5%の畑)では化学肥料の中に人工の窒素(チッソ)が多分に入っていて野菜が大きく育ちます。
 
 
つぎに、一般的な無農薬(オーガニック含め)の畑では動物性堆肥、つまり動物のフンの中に窒素(チッソ)などが入っていているため、それを発酵させて畑にまきます。
 
 
ですが、横山さんは業界用語でいうところの ” 草生栽培 ” です。野菜と野菜の間には草があるのが常で、草の種類が豊富なほど、それを食べに来る虫たちが暮らせます(葉っぱにも、土の中にも)。横山さんは畑に暮らす虫やミミズがフンをすれば「天然窒素」になると言います。
 
 
つまり、無肥料栽培は、肥料が無いのではなく、肥料を他から持ってきて畑に入れない、というだけ。
肥料は天然で畑にある。
虫やミミズがフンをして微生物のエサになり、虫やミミズが死んだら、その死骸が微生物のエサになり、そうして微生物が増えれば、微生物たちがミネラルを巡らせて植物に渡してくれる。
つまり、天然の栄養を巡らせるためには、虫がたくさん居ることが必要なのです。
 
 
横山さんの里芋畑が元気だったことは、微生物たちが里芋を育てて、また、根っこを守ってくれた(52参照)からだと考えます。