食のそもそも話 2 ✳︎ 不思議なそろうチカラ(便利なF1種)
タネには大きく2種類あります。
現代農業の中心であるF1種と、
昔ながらの固定種(≒在来種)です。
月田商店は固定種により美味しさを求めていますが、それはF1種を否定するものではありません。
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タネの話を始めるとき、やはり現代農業の主役であるF1種のことをまずは知っていただき、次に月田商店がもういっぽうの固定種に魅了される理由を語ろうと思いました。
ですので、1〜8話はあえてF1種の話になります。
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F1種は掛け合わたタネです。
かならず雑種にしています。
注)遺伝子組み換えとは違います。
遺伝子組み換えは科学や微生物のチカラを借りて ” 自然界では起こり得ない変化 ” を起こしますが、F1種は交配ですので、一方の野菜のめしべにもう一方の野菜の花粉をつければ交配完了です。
そうしてタネが育てば2つの性質が合わさる、ということです。
自然界ではミツバチや風に乗って花粉が飛び交い自然に交配は起こります(自然交配)。
それを意図的に「この野菜とこの野菜!」と選んで交配させた(人工交配)、それをF1種と呼んでいます。
※ 自然交配も広くとらえればF1種です。
F1種 = FIRST FILIAL GENERATION(雑種の1代目)
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では、どうして交配させるのでしょうか?
実はF1種には、ただ性質を合わせるだけではない、不思議な自然界のルールを活用しています。
今日はそのひとつ。
メンデルの法則について書いていきます。
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大辞林によると
メンデルの法則・・・メンデルが1865年に発見した遺伝の法則。親の形質は遺伝子によってある規則性をもって子や孫に伝わるというもの。優性の法則・分離の法則・独立の法則の三つの法則からなる。
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メンデルさんはえんどう豆に色々な種類があることを知り、それぞれを交配させたらどうなるか実験をしました。
たとえばサヤの中に丸い豆(タネ)が出来るものと、シワシワの豆(タネ)が出来るものを両方とも育てて、丸い豆が出来る方のめしべにシワシワの豆が出来る方の花粉をつけてみると、どうなるか?
同じ様に、黄色い豆が出来るものと緑色の豆が出来るもの。
他にもサヤの形、花の色、花が咲く場所、茎の背丈、いろいろと交配させて、
その1代目はどうなるか?
さらに2代目はどうなるか?
そんな実験をしました。
そこで発見されたのがメンデルの法則です。
自然界には交配されたタネ(1代目 = F1)とさらにその次のタネ(2代目 = F2)には不思議なルールがありました。
1代目だけは、両親の性質が混ざるだけでなく、
「不思議なそろうチカラ」がはたらいて、
育つスピード、カタチ、大きさ、これらの特徴が畑一面にそろって育つことを発見したのです※ 。
※ メンデルさんが亡くなって35年後の1900年になってその論文が発見され、現代農業に活かされるようになりました。
畑一面に同じ様に野菜が育つことは大きなメリットです。
ただし、2代目には「不思議なそろうチカラ」は失われ、両親の性質がバラバラに育つので農業用としては使えませんでした。
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メンデルの法則は農業に革命を起こしました。
タネ屋さんが交配させたF1種のタネを農家さんに販売し、2代目はバラけてしまうので翌年もタネ屋さんからF1種を買う、その繰り返しになり、タネは買うものになりました。
タネ屋さんは大手タネメーカーへと発展し、研究を重ねました。
そして農家さんはそろいが良く、病気や生理障害が出にくく、季節を問わずに1年を通して色々な野菜を作れるようになりました。
2023年10月3日 月田商店 店主 月田瑞志