よもやま話 その3 F1種のビミョーなところ「タネが採れないF1種がある」

 ” タネが採れない F1種がある ” 

F1種にネガティブなイメージを持つとしたらコレです。

よもやま話その8あたりで詳しく書く予定ですが、F1種はかならず雑種にしなければいけません。

雑種にするためには、他人の花粉が自分のめしべに着く必要があります。

そのときに邪魔になってくるのが自分のおしべです。

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自然界では、

①自分のおしべが作った花粉が

②自分のめしべ着いてしまうと

③自分の子供を作ってしまう(雑種にならない)

※ 「しまう」はF1種を作りたい側の視点

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そこでF1種が流行り始めた戦前では、

①おしべを ” 人の手で ” ひとつひとつ取り除く

 (めしべが残っていれば受粉できる)

②横に別の親戚野菜を並べて育てて

③ミツバチをはなつ

④ある程度ミツバチが飛び交ったら

⑤横の親戚野菜はつぶして

⑥おしべを取り除いた方だけを残してタネを育てる

⑦無事に雑種になり、F1種の出来上がり

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 ” 人の手でおしべだけを取り除く” というのはとても大変なことだったそうです。たくさんのパートさんを1日だけ雇っていっせいに行う必要があったのだとか。

そこで活かされたのが ” 雄性不稔(ゆうせいふねん) ” です。

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1925年、アメリカのジョーンズさんが赤玉ねぎの畑で奇妙な花を見つけました。

その赤玉ねぎの花はめしべは元気なのに ” おしべだけがクシャクシャ ” でした。

つまり花粉をつくれない花でした。

ジョーンズさんはその花(めしべだけは元気)に他の赤玉ねぎの花粉をつけてタネを採りました。

そうすると驚いたことに、まいたタネからはすべて ” おしべがクシャクシャ ” 花が咲きました。

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あとで解ったことですが、これは母親(めしべ)の性質が遺伝していく自然界の仕組みでした。

そして ” おしべがクシャクシャ ” な花(野菜)を ” 雄性不稔(ゆうせいふねん)と呼ぶようになりました。

文字通り、雄(おしべ)の性質がみのらないと言う意味です。

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雄性不稔は1925年に急に登場したわけではないと思います(植物の世界ではむかしからあったのではないてわしょうか?)

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雄性不稔の登場で、F1種はとてもつくりやすくなりました。

” 赤玉ねぎの瑞々しい性質 ” と” 固いけれど日持ちする一般的な玉ねぎ ” を掛け合わせていき、1941年頃に初めての雄性不稔を使ったF1種が販売されました。

その後、とうもろこし、人参、etc.、つぎつぎに雄性不稔が発見され、さまざまな野菜のF1種づくり(掛け合わせ)に活用されるようになりました。

スーパーや道の駅に並んでいる野菜、月田商店でも F1種は扱っています。

F1種がすべて雄性不稔を活用しているかどうかはひとつひとつタネメーカーにメールで問い合わせると解ったりします(返答が無い場合もあります)。

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今日はここまでにします。

雄性不稔のくわしい話は、

その4  ” 雄性不稔あぶない派 ” の意見

その5  ” 雄性不稔だいじょうぶ派 ” の意見

それぞれ来週、再来週で書く予定です。