食のそもそも話 28 ✳︎ 自家採種について月田が思うこと

タネの話はこれで締めくくりの予定です。
25話に分かれましたが、それぞれが完成していないはずですので自身で読み直して修正を繰り返していくと思います。
また、未来はこれらを脚本に100本のアニメーション動画を順々につくり発信していくつもりです。

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自家採種について月田が思うこと

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自家採種(じかさいしゅ)について、食のそもそも話 8と9あたりに書いたつもりでしたが、もしかして書き漏れていたかもしれません。
あらためて解説させて頂きます。

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自家採種は文字通り、自分の家で種(たね)を採ることです。
現代農業ではタネは大手タネメーカーから毎年買うものです(主にF1種)。
あるいは一部残っている昔ながらのタネ屋さんから固定種を買うこともあります(農業全体としては激レアケース)。
それに対して、タネを自分で育てて翌年もつないでいく。
それを自家採種と言います。
戦争より前の農家さんにはごく当たり前のことだったと言います。
今ではごくわずかな農家さんがその技を守っています。

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消費者の立場から見れば固定種、在来種、自家採種は同じものと考えてご購入頂いて良いと考えています。
ですので、固定種も在来種も自家採種した野菜も、月田商店ではまとめて固定種と表現することもあります(が、細かくは違うものです)。

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固定種は純血種
在来種はざっくり純血種

この2つはタネの種類を表す言葉です。

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自家採種はタネを採る ” 行為 ” を現す言葉です。
自家採種を繰り返すことで固定種になったり在来種になったりする。
そんな感じです。

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さて、今回のテーマは自家採種について月田が思うこと。

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自家採種には ” 馴化(じゅんか) ” を期待しています。
馴化は、馴染んで変化していくこと、をそう呼びます。
その土地を覚えて元気にすくすくと育つには、自家採種を繰り返して馴化が深まることが条件のひとつだと思っています。

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タネは子供です。
親が育った記憶をタネに宿して伝えます。
その土地の気候風土を伝えます。
太陽、日影、雨、風、土の感じなど。
それをタネに宿して次の世代、また次の世代へ、つなげていきます。
そうすると、野菜(植物も生き物も同様)は土地勘を身につけてその土地の気候風土に適応した野菜になっていくと言われています(これが伝統野菜)。
例)天王寺カブ(大阪)→野沢菜(長野県)

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実際に、山梨県都留市のベジガーデン佑喜さんの万願寺とうがらしと、埼玉県日高市のこころファームさんの万願寺とうがらしを食べ比べると食味に大きな違いを感じます。

野菜(植物)は変化してその土地に適応する力が強いようです。
代々自家採種を繰り返すことでより自然体になっていくと思います。

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もうひとつ大切なことがあります。

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自家採種をする理由はいくつかあると思いますが、そのひとつに「美味しい」からタネを残す、ということがあります。
その野菜をこの先も食べたい、食べてもらいたい、そうした理由で自家採種する野菜に選ばれてつながれていきます。

一方で一般のF1種のタネは「作りやすい(農家さんが)」「食べやすい(万人に)」を目的としている側面があるため、味が最優先にならない場合があります。
※ 甘さを目的にする場合もあり、それを好む消費者にはメリットがあるとも言えますが、個人的は甘いだけの野菜や果物には興味がありません。

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そうした訳で、ボクは自家採種という言葉にとても敏感です。
自家採種には「想い」があり、残したい「美味しさ」があり、土地に合った「自然体」があると思います。
昔の風景、未来の風景、そのどちらも頭の中に想像させてくれる。
とてもロマンだと思っています。