食のそもそも話 37 ✳︎ 塩の話(前編) いちばん基本「結晶濃度」を知っておこう
食のそもそも話30〜36まで海について解説してきました。
海の話と塩の話、これもやはり切り離せないと思い3編に分けて「塩」のお話をさせて頂きます。
塩の話をしているとほとんどの方が誤解されていることをまず前提で覆らせてください。
岩塩、天日塩、はミネラルをほとんど含んでいません (皆様がお使いのものがあればパッケージの裏をご覧ください→写真を撮って僕にLINEをくだされば直に解説致します)。
もちろん塩化ナトリウムですので、塩素とナトリウムで出来ています。これもミネラルですし、大切なものです。
ここでお伝えしたいのは、海水をつくっている約80種類のミネラル( = 僕らのカラダをつくっている)が岩塩や天日塩には入っていないということです。
岩塩、天日塩にもそれぞれメリットがありますので否定する訳ではありません。
僕たちはその恩恵を受けています。
ただ、健康面を考えた場合、そのミネラルバランスで塩をランキングするなら、
Aランク 自然海塩(海の精etc.)
Bランク 再生加工塩 (シママース、伯方の塩、赤穂の天塩)
Cランク 精製塩 (赤いフタの塩)、岩塩、天日塩 (メキシコ、オーストラリアetc )
この順番になります。
(一部の例外でとても素晴らしい天日塩もありますので注意)
これらの塩はすべて海からつくられています(岩塩も海が化石化したもの)。
それなのにどうして天然につくられた岩塩や天日で干した天日塩にミネラルが無いのでしょうか?
【ミネラルは分かれる】
それを知る一つ目にして最大のキーワード
「結晶濃度 (けっしょうのうど)」
について今回は解説させて頂きます。
海水に含まれる約80種類のミネラルたちは溶けて均一になっています(※ 1)。
溶けているミネラルたちは、海が蒸発して塩分濃度(※ 2)が上がっていくと、我慢できなくなって結晶になって下に沈み始めます。
これが塩なのですが、約80種類全部がいっきに塩になり始めるわけではありません。
海水が半分くらい干上がったときに、はじめに鉄系の塩が沈みます。
海水がさらに干上がっていって塩分濃度が上がっていくと、次に固いカルシウム系の塩が沈みます。
同じように、次は、柔らかいカルシウム系の塩、そして、塩化ナトリウム、カリウム、マグネシウム、順番に結晶になって沈んでいきます。
ゆっくり海水が干上がっていくと、こんな風に塩は分かれてしまいます。
(自然海塩はこれを防ぐために人の手でかき混ぜながら一晩で釜炊きします)
さて、これを踏まえて岩塩と天日塩にミネラルが無い理由を順番に書かせて頂きます。
【岩塩にミネラルが無い理由】
岩塩は太古の海が地殻変動で陸に閉じ込められて塩湖になり (今でいう死海、イスラエルとヨルダンの間)、それがゆっくりと干上がって、さらに火山灰などが上から降りかかって、地下に沈んで、圧力がかかって、そうして化石になったものです。
ゆっくり干上がっているため、塩の層はミルフィーユ状に分かれています。
土を掘って岩塩層にたどり着いても、そこはマグネシウムの塩です(バスソルトに使われている様です)。
さらに掘ってカリウムの塩、さらに掘って塩化ナトリウムの層に辿り着く※ 3、そうして塩化ナトリウムの層を今度は横に掘って行ったものが岩塩坑なのだそうです。
つまり、岩塩は塩化ナトリウムのかたまりです。
ちなみに岩塩にはカラフルなものがありますが、これは火山灰などから鉱物由来のミネラル分が微量に混ざって色づいているそうですが、これは微量で、さらに鉱物由来のミネラルは身体に吸収されないそうです。
例)ピンク色の岩塩は鉄分がまじっている。
【天日塩にミネラルが無い理由】
世界の塩の使い道は、実は9割が工業用です。
世界中で作られた塩の1割程度が僕らの口に入り、ほとんどは身の回りの工業製品などをつくるのに使われています。
「塩の木」で画像検索するとわかりやすいです。
工業目線では、ミネラルは邪魔なのです。
純度の高い塩化ナトリウムが欲しいのです。
そのために、天日塩をつくるための巨大なプール?を例えば横並びに3つつくり、
1つ目に海水をポンプで流し入れて、鉄系の塩とカルシウム系の塩が沈んだ段階で上澄みの海水を隣の二つ目のプールにポンプで移します。
2つ目で塩化ナトリウムが沈んだら、その上澄みをさらに隣の3つ目のプールに移します。
こうすれば2つ目のプールには塩化ナトリウムだけが残り、工業目線では役に立つ高純度の塩化ナトリウムが取り出せるという訳です。
次回は、塩の話【中編】「かん水」について書かせて頂きます。
※ 1 細かく言うと重いミネラルは海底に沈んでいくとされていますが、1番重たいカルシウムでも海底に届くまでに500万年かかるそうです。
世界の海はどこをとっても約80種類のミネラルが均一だとされています。
もちろん、森から川へ、川から海へ、ミネラルが巡ってきますので、河口付近は違うはずです。
※ 2 塩とは「塩化ナトリウム」であるとする考え方と、塩とは「海のエキス(ミネラル約80種)」であるとする考え方に分かれますが、塩分濃度の話をする場合はどちらでも構いません。単純に海水が濃くなっていくとご解釈ください。
※ 3 もっとも、海水の塩分濃度は3%前後で、そのうち多くが塩化ナトリウムなので、マグネシウムの層、カリウムの層はそれほど厚みは無いはずです。