食のそもそも話 56 ✳︎ 逆に、「耕す意味」を考える①自然農業の場合〜浅く耕す必要性〜

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食のそもそも話はほぼ毎週1話ずつ書いています。
八百屋の目線で「自然科学」と照らし合わせて、野菜の美味しさを探っています。
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46から土の話を書いて来ました。
横山秀男さんの畑をモデルに50〜55では「耕さない」意味を書いて来ましたが、実は横山さんも一部は耕します。
世間で「不耕起栽培(ふこうきさいばい)」と言う時も、まったく耕さないということでは無いのではないでしょうか?
 
 
【横山さんが「耕す」意味】
 
 
他の草が生えている場所にタネを蒔いても、野菜はなかなか芽生えて来ない(野菜にもよるとのこと、特に葉物野菜はなかなか芽生えないそうです)。

耕さないでも大丈夫な野菜や大丈夫な状況なら耕さず、必要な野菜や必要な状況では少し耕す。

そうしたお話です。
 
 
※ タネの世界では、地上が日陰で太陽がないと思うと芽生えるのを諦めて休眠をつづけて、次の季節を待つと言われています(詳しくは23を参照)。また、植物が他の植物が育つのを邪魔する成分を出すという例も聞きます(時に助け合ったり、時に競ったり、植物の社会もボクらと同じ様です)。
 
 
なので横山さんは、高く生えている草たちをまずは草刈機で刈って(これはそのまま天然マルチに使う)、つぎに低い背丈になった草たちを耕しています。
この時に、浅く、そして粗く耕すのがポイントとのこと。
 

【浅く耕す意味】
一般的には畑を柔らかくするために耕すイメージがありますが、横山さんの様に草や虫がいる畑では自然の生態系が畑をやわらかくしてくれます。ですので、あくまで他の草たちに一度どいてもらうために、表だけ耕す。
(耕す必要がない野菜は耕さず、また、こうして耕すとしても年に1回にしているとのこと)
 
 
【粗く耕す意味】
このときに、土のかたまりをわざと残す様に粗く耕しています。
微生物が多い畑は団粒構造(だんりゅうこうぞう)という天然の仕組みができていますので(53参照)、耕してそれを一度壊してしまうとしても、粉砕しないで置けば、微生物たちが住み家(団粒構造)を復興しやすいとのこと。
 
 
こんな風に、横山さんは最低限必要なところだけを耕しています。
他の不耕起栽培の農家さんも、タネを蒔くところだけを線状に細く耕したりしている様です。
 
 
2024年6月1日 月田商店 月田瑞志